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即売会で同人作品のデータ販売を行うにあたり、無断転載を防ぐべく可能な限りハードルを上げた頒布手順を考えてみる

以前、とあるフォロワーさんが「同人をデータ販売したいけど、転載対策が難しい」といった内容のツイートをされていました。

データ販売 (有償での頒布) の無断転載防止というのはなかなか難しいですね。そういえば私自身も気になるテーマだなと思ったのでした。

そこで、即売会においてデータ販売を行い、無断転載の可能性も可能な限り下げるにはどうしたらよいだろうか?を私なりにちょっと考えてみました。具体的に、方法を。

 

無断転載を100%防ぐのは難しいと考えられますので、はなからそれは無理と割り切ります。
代わりに、頒布方法を工夫し、購入者にとってのハードルを「購入の際に」「ダウンロードの際に」「閲覧の際に」「無断転載を実行しようとした際に」それぞれ可能な限り上げることを考えてみました。

ご紹介する内容の全てを採用せずとも、一部を採用するだけでも無断転載へのハードルは上がると思います。
ただし採用すればするほど、購入者にとっては購入と閲覧に多くの手間がかかり、面倒になります。なので、売れ行きは悪くなる可能性が高いです。

 

また、この記事はあくまで私が机上で考えただけにとどまる内容です。現実的でない手法も含まれるかもしれません。実際にこれらを採用してのサークル参加を行った実績はございませんので、あしからずご容赦ください。

【更新情報】
◆2020年03月14日 20:20:20更新。pictSPACEについて新規に記述しました。
◆2020年03月12日 01:39:45更新。同人について扱う記事であることがやや伝わりづらい記事タイトルであったので、少し改題しました (「同人作品の」と追加)。
◆2020年02月03日 01:31:30更新。リンクを貼っていたノートンのWebアプリについて、正常に直接リンクできない仕様のようなので削除しました。少し加筆修正しました。
◆2020年02月01日 14:51:13初稿。

前置きとして、考えてみた背景

(前置きなので、読み飛ばして大丈夫です。)

一般に、同人作品のデータ販売は、アップロードから販売・ダウンロードまでWeb上で完結して行われます。
古くはDLsite、現在ではメロンブックスなど大手もデータ販売サービスを用意していますし、pixivがBOOTHを展開したことにより更にハードルは下がり、同人作家によるデータ販売への参入が容易となりました。

しかし、これらはダウンロード数に制限がなく、匿名性をも確保されています。
無断転載 (許可を得ない不正なアップロード) への対策が困難です。売り手と買い手が互いに顔を合わせませんので、無断転載を行う心理的障壁も下がるのではないかと想像されます。

メロンブックスなど大手はDRM制限をかけることに成功しているようですが、いずれにせよ画像データやPDFについて、スクショ撮影を防ぐのは不可能です。

squeuei.hatenablog.com

一方、即売会におけるデータ販売は、DVD-ROMやCD-ROMによるものが主体です。これについても、個人でかつてのCCCDのようなコピーコントロール技術を導入するのは難しく、それが仮にできても前述したとおりスクショ撮影を防ぐことはできません。

以上を踏まえて、即売会においてデータ販売を行い、無断転載の可能性も可能な限り下げるにはどうしたらよいだろうか?をちょっと考えてみたという次第です。

 

ただ、先に記しておきますが、スクショ撮影自体を防ぐことはやはり不可能です。あくまでこの記事ではハードルを上げてみたり、抑止力を設けてみたりしようと考えているだけです。スクショ撮影による転載の発生の可能性そのものは、これだけでは避けることができません。

また、この記事で考えているのは、販売用データの差分管理とアップロード・URLの管理などにかなりの手間と手作業を要します。したがって、10~30部ほどの少ない頒布数でなければ難しいとお考えください。かかる手間の割りに、見返りはありません。頑張っても50部くらいが限界かな…

というか、自分で記事書いてて思ったんですが。もしも本当にこれらの方法を全部採用するなら、見返りがないのに本当に途轍もない労力がかかりますので覚悟してください。

あと、下手すると1部も売れなくなります。

頒布するデータの用意

まずは頒布するデータを用意します。

ここで課すハードルは、「購入者ごとに少しずつ異なるデータを用意し、もし無断転載が行われた際にどのデータが転載されたか判断できるようにする」です。
このことにより、無断転載を行なう心理的な障壁を上げることを狙います。

 

具体的には、イラストであれば次のような方法が考えられます。

  • 背景の模様の一部を少しずらす
  • 人物の位置を少しずつずらす
  • 人物の装飾品の一部の色を変える
  • ハイライトの光源の数を変える

テキストであれば、次のような方法が考えられます。これは、イラストデータの場合にもあとがきで使えますね。

  • 一部のフォントや文字サイズを変える
  • わざと禁則処理に失敗して一部の句読点を行頭に置く
  • わざと一部だけ読点 (、) をコンマ (,) にする

サインの位置を変えたり全体に透かしを入れるという方法も考えられますが、個人的にはあまりおすすめできません。サインは無断転載時に消されやすく、透かしは善良な購入者にも嫌がられる可能性があるためです。小さくて目立たない透かしなら大丈夫かも。

いずれにせよ、同じ金額で購入してもらうものなので、間違い探しレベルの微細な差異にとどめ、大きく異なることのないようにしましょう。

頒布する数だけデータを用意する必要はあるか

頒布する数だけ別々のデータを用意するのがベストだとは思いますが、ページ数の多いデータであれば各ページについてパターンを数個用意しておき、互い違いに組み合わせていくだけでも十分だと思います。

整理の例
3種類を3ページずつで計27種類、更に2種類を1ページ加えると54種類になりますね

ただし、これでは1ページだけ無断転載された場合には無力です。それを避けるには、頒布する数だけ完全に別々のデータを用意することになります。

PDFに保護をかける

画像ファイルでの頒布の場合、圧縮ファイルにパスワード保護・暗号化処理をかけることができます。しかし、画像ファイルそのものにそれをかけることは通常ではできないため、一度書庫を解凍してしまえば無断転載が容易です。

一方PDFでの頒布であれば、PDFの元々備える機能として保護をかけることができます。閲覧時のパスワードや、印刷禁止などの指定ができます。ここで課すハードルは、その「パスワード保護と、印刷禁止」です。

 

PDFの最も優れた編集アプリはやはり公式のAdobe Acrobatですが、無償アプリでもパスワード保護くらいならできます。おすすめなのは「CubePDF Utility」です。

www.cube-soft.jp

CubePDF Utility
AES-256bitによるパスワード保護や、印刷の禁止などが指定できます

ここで、管理用パスワードはこのPDFを後から編集したい時に用いるパスワードで、閲覧用パスワードはPDFを閲覧する際に入力が求められるパスワードです。

閲覧時のパスワード入力画面
閲覧時にはパスワードが求められます

印刷の項目が選択できなくなっている
そして、印刷が禁じられています

ただしPDF保護には落とし穴があって、保護したPDFをGoogleドライブにアップロードすると、禁止を無視して印刷できてしまいます…😔
印刷するとパスワード保護は勿論解除されてしまいます。このことを知らない相手にしか通用しませんね。

また、言うまでもなくスクショを防ぐこともできません。

パスワード生成もなかなか大変

頒布する数だけの複数のデータを用意するのも大変ですが、それぞれ別々のパスワードを用意するのもなかなか大変です。頒布URLを変えてやれば、このパスワードは同じでもいいかもしれないですけど…

一回きりのパスワードですので簡単なものでもよいかもしれませんが、心理的にはそこそこ難しいものにしておきたいところです。

 

同人に直接関係のない一般論の話として、私は世の中の皆さまにパスワードの管理には是非専用のアプリを活用してほしい気持ちがあるんですけど。そんなパスワード管理アプリには、標準的にパスワード生成機能が附随しています。

ランダムなパスワードを生成できるので、パスワード生成に役立つと思います。ここでは詳細な解説については割愛します。

excesssecurity.com navi.dropbox.jp japan.norton.com

KeePass 2.x
アプリによっては、一度に大量にランダムなパスワードを生成し、纏めてコピペできるものもあります (画像はKeePass 2.x Windows版)

ちなみに、Web上でパスワードを生成するサービスもあります。一応、どんな業者が提供しているサービスであるかは注意しながら利用してください。

1password.com www.lastpass.com

配信するためのクラウドサービスの用意

配信にはクラウドでデータを共有できるサービス、ここでは特にファイル転送サービスを用います。

ここで課すハードルは、まさにその「ファイル転送サービスを利用できるリテラシーがあるかどうか」と、「パスワード保護ならびに、ダウンロード可能期間の短縮」です。

 

考えたいのは、以下を備えたサービスで、なおかつ使いやすいものです。

  • 1アカウントで複数のファイルをアップロード・送信できる
  • 比較的大きなサイズのファイルをアップロード・送信できる
  • ファイルのダウンロードに (別々の) パスワードを求めることができる
  • ファイルのダウンロード可能回数・可能期間を (別々に) 設定できる
  • URLがランダム発行であり、第三者から特定されない
  • 同時に複数のファイルをアップロードすると、別々のURLを発行してくれる
  • (当然ですが) 通信経路が暗号化されており、セキュアである
  • サーバ上でもファイルが暗号化されており、セキュアである
  • 無償である

これらを全て備えたサービスは見つかりませんでした…😔

比較的多くを備えているのは「BitSend」です。作業効率上、結構重要と考えられる、「同時に複数のファイルをアップロードすると、別々のURLを発行してくれる」に対応するのはBitSendだけでした。

それには対応していませんが、その点以外は優れた「Firefox Send」も紹介しておきます。

ちなみに、どのサービスも「1アカウントあたり、何ファイルまでアップロード・送信が許されているか」の正確な情報が見つかりませんでした。ヘルプや規約にも書かれていません。
少なくともBitSendは100ファイル以上が同時アップロード可能でした。「無制限」と書かれてはいるのですが本当に無制限かは分かりません。まあ同人でテラバイトクラスのデータは上げないとは思いますが…

BitSend

BitSendは、レンタルサーバのmixhostを運営しているアズポケットによるファイル転送サービスです。今回紹介している中では最も小さな会社ですね。

  • アカウント登録 - 不要
  • アップロード可能ファイルサイズ - 不明 (自称 "無制限")
  • ダウンロード可能回数 - 設定できない (ダウンロード回数が表示されるのみ)
  • ダウンロード可能期間 - 当日削除、1日間、2日間、…、14日間
  • 発行URL例 - https://bitsend.jp/download/********************************.html

https://bitsend.jp/bitsend.jp

同時に複数のファイルをアップロードすると、別々のURLを発行してくれるのが便利です。後述するFirefox Sendや他社サービスは、同時に複数ファイルをアップロードすると同一のURLに纏められてしまいます。

ただし、パスワードは自動生成の僅か8文字であり、任意に指定できません。また同時アップロードの場合には、パスワードも全て同一になってしまいます。

加えて、ダウンロード可能回数の制限も設定できません。ダウンロード可能期間による制御しかできないので、ここはやや不安かもしれませんね。

作業効率上、同時に多数のファイルをアップロードできるのは大きなアドバンテージですが、もっとちゃんとパスワード保護をしたい方やダウンロード可能回数を定めたい方には向きません。

一方、無償で14日間までファイルをダウンロード可能にしておけるというのはメリットです。加えて、その場ですぐにQRコードを発行することができるのもメリットかと思います。

BitSend
QRコードをその場で生成できます。「goolge+」はご愛嬌か…?

会員登録が不要である代わりに、アップロードしたファイルの管理画面も用意されていません。なので、アップロードが完了したら各ファイルのURLを控えることを絶対に忘れないでください。ミリシタでメメントモメントのイベント始まりますね。

Firefox Send

Firefox Sendは、Firefoxブラウザを開発しているMozillaによるファイル転送サービスです。名称に「Firefox」とありますが、利用にあたって利用ブラウザの縛りはありません。

  • アカウント登録 - 任意
  • アップロード可能ファイルサイズ - アカウントなしなら1GB、アカウント作成で2.5GB
  • ダウンロード可能回数 - 1、2、3、4、5、20、50、100
  • ダウンロード可能期間 - 5分間、1時間、1日間、7日間
  • 発行URL例 - https://send.firefox.com/download/****************/#**********************

send.firefox.com

前述したように、同時に複数のファイルをアップロードすると一つのURLに纏められてしまいます。したがって、頒布データごとに逐一、別個にアップロードする必要があります。頒布数が10くらいならまだいいでしょうけど、30とか50とかなってくると地獄です。

ですが、ダウンロード可能回数の制限もできますし、何よりMozilla運営であるというのが高い安心ポイントだと思います。

Firefox Send
アカウントを登録しておけば、残りダウンロード期間やダウンロード状況が確認できます

クラウドストレージは、有償版であれば使える

ここまで無償のサービスを紹介してきましたが、お金をかけてよいならファイル転送サービスではなく通常のクラウドストレージも選択肢に入ります。
クラウドストレージであれば、当然ながら同時に複数のファイルをアップロードでき、作業効率が良いです。代わりに、共有URL発行作業は個別になりますが。

 

例えばMicrosoftの「OneDrive」の有償版であれば、パスワードはもとより、柔軟なダウンロード可能期間の設定が可能です。無償版だと、パスワード制限も期間の制限もできません。

Office 365 Solo版のOneDrive
ダウンロード可能期間をカレンダーから選ぶことができます (画像はOffice 365 Solo版)

有名どころでは「Dropbox」も、有償版であればパスワードとダウンロード可能期間を設定できます。

お金をかけてよい あるいは既にクラウドストレージに課金している方であれば、共有機能が便利に活用できないか探ってみてください。

 

ちなみに、Dropboxが用意しているファイル転送サービス「Dropbox Transfer」は、無償では1ファイルあたり100MBまでしか使えないのでここでは紹介しませんでした。こちらも有償版であれば1ファイルあたり2GBまで可能となりますので、お金をかけられる方はどうぞ。

ただし、Dropbox TransferもやはりFirefox Send同様、同時に複数のファイルをアップロードすると一つのURLに纏められてしまいます。

対面電書はこの用途に使えるか

同人向けのファイル転送に特化したサービスとして、「対面電書」があります。名称の通り、対面で電子書籍を頒布することを想定したサービスです。運営者はゲーム開発会社の自転車創業です。

taimen.jp

対面電書ではパスワードの制限と、ダウンロード回数の制限が可能です。ダウンロード可能期間については「再ダウンロード」の期間として設定可能です。ファイルサイズは無償50MB・有償500MBまでで可もなく不可もなくでしょうか。URLの非公開も可能ですが有償機能です。

対面電書
こんな感じで、最大1年間までダウンロード期間を設定できます

ただ、ダウンロードされるのは同一のファイルとなります。したがって、この記事で説明してきた「購入者ごとに少しずつ異なるデータを用意する」方法を採ることができません。

その方法を採用しない場合には、十分に選択肢に入るかと思います。

pictSPACEもこの用途に使えるかも

(2020年3月14日 追加)

pictspace.net

「pictSPACE」という自家通販サービスがあるようです。登録は無料で、頒布にあたって手数料を設けているシステムです。検索エンジンからの除外や、アカウント登録者のみに見せる機能があったり、匿名配送に対応していたりと便利ですね。そして「ダウンロード頒布」機能があるため、この記事で紹介している内容に沿うのではないかと思われます。

詳細なサービス内容については私のほうで検証できておりませんので、参考程度のご紹介にとどめておきます。

データへのアクセス権を手渡しするための用意

頒布するデータが準備できたら、次はそれを実際に頒布するための用意が必要になります。

整理の例2
まずはテーブルに情報を纏めておくとよいかと思います (当たり前ですが画像は架空のURLとパスワードです)

ダウンロード用URLをQRコード化する

予め発行しておいたダウンロード用のURLを、購入者が読み込みやすいようにQRコード化します。

QRコード生成にはWebアプリが便利です。

barcode-place.azurewebsites.net www.graphic.jp

アイコンを真ん中に置けるものもあります。

qr.quel.jp

ちょっと見映えをよくできるように、「デザインQRコード」というものもあります。

barcode-place.azurewebsites.net andoo.net

 

また、アララの提供する「クルクル マネージャー」というサイトでは、作成したQRコードそれぞれの読み取りログを取得することのできるサービスを提供しています。利用には無償の会員登録が必要です。

アララは、QRコードを開発したデンソーウェーブとの共同開発により、デンソー公式のQRコード読み取りアプリをリリースしている企業です。

m.qrqrq.com

クルクル マネージャー
とはいえ、IPアドレスなどを直接取得できる訳ではなく、簡易的なログしか取ることができません

クルクル マネージャーを採用すると、「サークルに位置情報を取得されるかもしれない」というハードルが課されます。

QRコードを印刷する

頒布するため、作成したQRコードを印刷します。

真っ白な用紙に印刷して渡すのでも問題ないのでしょうけれど、それだと流石に味気ないですね。
なので、実際にはポストカードやグッズ類に直接印刷するか、印刷した紙をペーパーとしてグッズに添付して渡すことになるでしょう。

印刷したら、自前のスマートフォンなどでQRコードが正しく読み取れるかどうか数枚程度チェックしておくとよいと思います。

パスワードをどのように伝えるか

ダウンロード用ならびに閲覧用のパスワードについては、QRコードと一緒に印刷しておけばよいかと思います。

更なる入れ子構造として「ダウンロード用URL、ダウンロード用パスワード、閲覧用パスワードを全て記載したテキストファイルを頒布する数だけ用意し、それをクラウドストレージにアップロードしておいて、そのテキストファイルの共有URLをQRコード化して配布する」という方法も思いつきますが、管理がますます煩雑になります🙃

間にアンケート画面を設けることもできる

少し順番が前後しますが。ダウンロード用のURLが準備できたら、それをそのままQRコード化せずに、間にGoogleフォームを噛ませることで、購入者へのアンケートを強制することもできます。「アンケートの強制」、これも結構なハードルになります。

Googleフォームでアンケートを作成したら、その送信完了メッセージとしてダウンロード用のURLを貼っておくのです。アンケートの本文内に「絶対に無断転載を行わないと約束する」という項目を設けるのも手かと思います。

Googleフォーム
正直、自分で書いてても、ここまでくるとやりすぎ感を感じています

Googleフォームでは、回答にあたってGoogleへのログインを強制する指定もできます。また、メールアドレスを収集することもできます。

Googleフォームの設定例
このことを本文中で明記すると、それもハードルになりそうです

送信完了メッセージにURLを置くということはすなわち、フォームを頒布する数だけ用意しなければならないということになります。
頒布する数だけフォームが用意できたら、そのフォームのURLをQRコード化します。

QRコード決済の用意

購入にハードルを課すべく、会場での支払い方法は「一種類のQRコード決済のみの受付」とします。

少し紛らわしいですが、ここでのQRコードは販売するアプリ用 (支払い用) のものであり、データへのアクセスURLのQRコードとは異なりますので注意してください。

 

QRコードを用いたバーコード決済は一般に普及してきています。ですが、大手の提供するQRコード決済サービスというのは法人や個人事業主でなければ導入が難しいものが多く、即売会で扱うにはサークル側にとってハードルが高いものです。購入者側にとっては大手のサービスならハードルが低く、気楽なのですが。

そこで、一般にあまり普及しておらず、なおかつサークル側にとって導入するハードルの低いQRコード決済を使います。また、都度金額を入力するのではなく、「額面を指定したコードが複数発行できる」ものに絞って説明します。

考えられるのは「pixiv PAY」「Kyash」と、一応「PAY ID」です。

pixiv PAY

pixiv PAYは、名称の通りピクシブが提供しているQRコード決済です。

https://pay.pixiv.net/pay.pixiv.net

この記事で紹介している中では唯一、即売会での利用を中心に考えられたアプリです。アプリ内で支払い用のQRコードの発行まで行えるのはこれが唯一です。

pixiv PAYはアプリ内でQRコードまで発行できる
頒布物を登録して価格を決めたら、アプリ内でQRコードの発行までできます

UIもPayPayなどの大手サービスに似ており、違和感なく扱えると思います。

pixiv PAYで複数の頒布物を登録した例
複数の頒布物を登録できます

pixiv PAYの支払い画面
支払い画面はこんな感じです

Kyash

Kyashは、三井住友フィナンシャルグループなどが出資する、同名の企業が提供しているサービスです。当初は個人間送金のためのアプリでしたが、現在ではどちらかというとプリペイド式のVISAカードとして知られていますね。

kyash.co

今回は個人間送金機能を使います。

 

Kyashもpixiv PAY同様に額面を固定して複数登録することができます。ただ、出力されるのはQRコード画像ではなくURLのテキストデータなので、自分でそれをQRコード化する必要があります。

Kyashの登録画面
「請求リンク」として登録します

Kyashも複数の品を登録できる
複数の登録が可能です

Kyashの支払い画面1
URLに飛ぶと、ブラウザでこのように表示されます

Kyashの支払い画面2
「Kyashで支払う」からKyashアプリへ変遷し、このような画面から支払いすることができます

 

なお、PayPay、楽天ペイなど他の多くのバーコード決済アプリにも個人間送金機能が備わっています。また、個人間送金アプリとしてはpringも有名ですね。

ですがそれらを実際に触ってみたところ、都度金額を入力しなければならないなど、即売会での利用には適さないと思われる簡易的な仕様にとどまっていることが分かりました。なので、ここでの紹介は行いません。

PAY ID

一応PAY IDも紹介しておきます。

id.pay.jp

先に記しておきますが、規約上PAY IDは二次創作や成年向けの頒布物には利用できないことに注意してください。

https://help.id.pay.jp/hc/ja/articles/115009363247help.id.pay.jp

PAY IDは、ネットショップ開設に使われるBASEから発展した支払い用のサービスです。主にネット販売において使われていて、「販売リンク」を作成してそのURLから支払いが可能となっています。

額面を固定したQRコードの発行もできます。ですが、それを行うためには大元のシステムである「PAY.JP」に登録し、各ブランドホルダの審査を通してから「本番利用申請」を行う必要があるなどサークル側のハードルが高いです。

アプリの機能として直接QRコードを発行せずに、前述した「販売リンク」を自前でQRコード化することで代用が一応できます。ですが、アプリではなくブラウザ上でログインすることになったりと、Kyashに比べてもシステム的に分かりづらいものとなっています。正直なところ、あまりおすすめできません。

 

それでは何故ここでわざわざ紹介したのかというと、PAY IDでは購入者に個人情報の入力を強制することができます。この機能は、サークルが自家通販を行えるように備わっています。販売リンク (URL) をシェアすることで、PAY IDが自家通販のサイト代わりになる訳です。

PAY IDの登録画面
頒布物の登録時に、購入者の住所入力を必須とすることができます

PAY IDでは個人情報の入力を強制できる
このように、個人情報の入力が強制されます

個人情報の入力は、購入者のハードルとしては大きいものになると考えられます。

ハードルを上げられる方法なので一応紹介しておきましたが、サークル側の導入にもかなり手間がかかり、購入者側も操作が分かりづらくかなりの手間を要しますので、流石にお互いに不満が募りそうですね。
会場で、購入しに来た方に立たせたまま住所を入力させることになりかねない というのはあまりにも時間がかかりすぎます。

これだったらpixiv PAYかKyashでいいかな…とは思います。個人情報保護法との兼ね合いも考えないといけないだろうし、大変そうだなと…

それ以外の方法

上記以外のキャッシュレス決済方法を即売会で導入したい場合には、以下のサイトあたりをご参照ください。pixiv PAYなどについての情報もあります。

https://www.oshidoko.tokyo/entry/comicmarket/cashlesswww.oshidoko.tokyo half-works.mefws.com

ちなみに、調子に乗って個人でキャッシュレス・消費者還元事業に手を出そうとすると結構面倒なようなので注意してください😑

sazanami.net

手数料についてどう考えるか

基本的に年会費はかからないと思いますが、クレジットカード会社の決済手数料や口座振込時の手数料はどうしてもかかります。

その手数料の負担についてどう考えるかは、サークル次第だと思います。

それらを頒布物の価格に転嫁したくなったとしても、「クレジットカード決済時のみ価格を反映する」のは各クレジットカード会社の規約に違反します。
ゆえに、QRコード決済についてのみ価格を上げるのも規約に違反すると思われます。QRコード決済も、購入者がクレジットカードを介して利用することになるからです。

 

したがって、現金・クレジット・QRコード決済などの支払い方法にかかわらず、頒価は一定にしておく必要があります。レトリックとして、全て一括で価格設定をする≒全て一括で値上げする分には、関係ありません。

zuuonline.com

 

まあ、今回ははなからQRコード決済のみに限定する想定ですので、頒価は必然的に一定になりますけどね。

キャッシュレス決済では支払額の端数を気にする必要がないので、300円+手数料3%=309円とか、500円+手数料5%=525円とか、中途半端な価格設定が気軽に可能になります。

 

なお、Kyashであれば手数料がかかりませんが、残高を銀行口座に戻すことはできません。残高は専用のVISAバーチャルカードか、VISAプリペイドカードとして利用する必要があります。

予めSNSなどで購入・閲覧の手順説明を繰り返し行なう

さて、これだけ複雑な購入手順を用意したからには、その流れについて詳細に告知しておく責任があるでしょう。

お品書きをSNSに流す際に説明するのは勿論のこと、それ以外にも複数回の告知が必要となると思われます。

 

特に、次の点は集中的に告知する必要があるかと思います。

  • 現金での支払いは受け付けない
  • 予め対応アプリをインストール・ログインしておいてもらい、使い方に慣れておいてもらう
  • 来場時にはスマホの充電や回線状況に気をつけてもらう
  • ダウンロードは○回しかできない
  • ダウンロードが可能な期日は○日間であり、それを過ぎるとダウンロード不可となる
  • 無断転載防止のため、頒布者ごとに少しずつ異なるデータを入れている (間違い探しレベルのごく小さな差異である)

コミケなど回線が不安定な会場では、もしかしたらそもそもQRコード決済の採用を断念せざるを得ない場合があるかもしれませんね。

電波の悪さは同じ会場内でも場所や混み具合に依存しますので、予測は難しく、当日現地で初めて回線の状態に気づくことになるでしょう。なので、緊急対応として「回線がダメなのでやっぱり現金でお支払いください」ということに陥る可能性も考えておいたほうがよいのかも。

個別対応はどの程度行うか考える

ダウンロード可能期日を極端に短く設定している場合、「即売会の日はその後すぐに仕事があって、そのまま遠方へ出張してしまうのでダウンロードできません。どうしたらよいでしょうか?」といった声が上がる可能性があります。そういった時には相手とよく話し合って、都度やり方を決めてください。

また、これは即売会後の話になりますが、「ダウンロードに失敗してしまいました。URLを再発行してくださいませんか」といった問い合わせが来る可能性が十分にあります。予め発生を予測して、対応を考えておくのがよいと思います。

頒布時、購入者への説明と注意喚起

上記の注意は、即売会の会場でも対面で行うのがベストです。とりわけ、「ダウンロード可能な期日が短い」ことは確実に伝えるべきです。

注意事項をペーパーとして頒布物に添えるのもよいと思います。

 

また、対面で「配布データに工夫がしてありますので、もし無断転載が行われた場合、どの購入者が転載を行ったか当てをつけることができます。注意してください」などと相手の目を見て伝えれば、心理的に大きな障壁を課せると思います。
ですが、善良な購入者からすると「キツいサークル主だな…」と思われると思います。

成年向けではないのに身分証明証の提示を強制できるか

購入者に身分証明を行ってもらうのもハードルを上げられますね。頒布物が成年向けであれば、身分証明を見た目の年齢にかかわらず強制するのは道理が通ります。

一方、全年齢向けの頒布物についてはどうなのでしょう。身分証明証の提示を強制すればハードルが上がりますが、そもそも法規上提示する必要がないのに提示を強制してしまって大丈夫なのでしょうか。

 

ここら辺、調べても全然情報が見つからなくて、正直なところ全く分かりませんでした。

参加する即売会の運営へ確認を取るのが安全かと思いますが、運営の中の人も一般の方が大半でしょうから、「分からない」という答えが返ってくることになるかもしれませんね。

この記事を読まれた方の中に、どなたかこういった法律に詳しい弁護士さんはいらっしゃいませんか…(他力本願)

即売会運営への見本誌提出に注意

即売会では運営へ頒布物の見本誌 (サンプル) を提出する必要があります。ダウンロード形式にてデジタル販売を行う場合、頒布物の用意の仕方が異なるため、運営への見本誌の提出がそのままでは行えません。

ダウンロード形式でのデジタル販売について規定がある場合はそれに従えばよいですが、規定がない場合には見本誌の提出方法について予め運営に問い合わせるなどしておく必要が出てくるでしょう。

例えばコミケでは「オフラインで確認ができる媒体」での提出が求められます。すなわち、配布予定のデータをCDやDVDに焼いて提出することになるようです。

togetter.com

 

また、差異が僅かとはいえ、「無断転載防止を目的として、頒布者ごとに少しずつ異なるデータを入れている」ことと、実際の差異の例についても運営に示しておくのが無難と思われます。トラブル防止のため。

場合によっては、そのような頒布方式は認めないということになるかもしれませんからね。できれば、頒布データを作成する前に運営に確認を取っておくのがよりベターな流れでしょう。

ご近所サークルさんへの挨拶回りはどうすべきか

ダウンロード形式の場合、ご近所のサークルさんへの挨拶回りにおいて頒布物を差し上げたり交換したりするのは別の意味でハードルが高いですね。挨拶なのにやり方を長々と説明する訳にもいかないでしょうし…

あくまで名目上「販売しているグッズに、データをダウンロードできる権利を附随させている」といったような形であれば、グッズのみを渡すのも手かと思います。

即売会終了後の処理

(2020年2月3日 加筆修正)

即売会終了後は、利用したファイル転送サービスへアクセスし、正常にダウンロードされているかをチェックしてみましょう。

自動的に○日間でファイルが削除される設定を行っていなかった場合には、周知した削除予定日時を過ぎたタイミングで、手動でリンクを削除してください。

また、支払い用のQRコードGoogleフォームなどの経由サービスについても、必要に応じて削除してください。

前述の通り、「ダウンロードに失敗しました」といった問い合わせが来る可能性にも備えてください。その問い合わせが本当かハッタリかについても見極めなければなりません。

手順をまとめると

  1. 少しずつ変化させたデータを用意する
  2. PDFに保護をかける
  3. ファイル転送サービスでパスワードやダウンロード可能期間を設定する
  4. 購入者用アンケートを挿む
  5. URLをQRコード化する
  6. QRコードを印刷し、頒布物に添付する
  7. 会場では、一種類のQRコード決済のみ受け付ける
  8. (可能なら) 身分証明証の提示を強制する

SNS上などでの告知は随時行ってください。

いわゆるアイキャッチ画像
はてなブログはOGP用画像に記事内の画像しか原則的に指定できないので、ここにOGP用画像を置いておきます

購入者のユーザビリティはどの程度考慮すべきなのか

ここまで紹介してきた内容は、採用すればするほど購入者にとっては購入と閲覧に多くの手間がかかるようになり、大変面倒に感じられる可能性の高いものです。

したがって、手間をかけさせればかけさせるほど、「どんなに大変でも欲しい!」という熱心なファンでない限り買ってもらえなくなる可能性が上がります。間違いなく売れ行きは悪くなると思います。

特に、会場で初めて品を目にして「欲しい」と思った方がいた場合、その方に買ってもらえる可能性も大きく下がります。

 

それは裏を返せば、無断転載の可能性を大きく下げられるということでもあります。ですが、繰り返すように無断転載の可能性を完全にゼロにすることはできません。

購入者のユーザビリティをどのくらい確保しながら、無断転載の可能性をどのくらい下げるか…。このバランス取りはとても難しいだろうと思います。

サークルへの問い合わせ対応の負担も増える

また、購入・閲覧の手順をあまり難しくすると、すればするほど「欲しいけど、どうやって買ったらいいか分かりません!やり方を教えてください!」という問い合わせが増える可能性が激増します。

つまり、購入者側の手間を増やせば増やすほど、サークル側にとっては問い合わせに対応する手間が大きく増すことになります。

 

事前にリプライやDMなどで問い合わせがあるだけでなく、会場で面と向かってやり方を質問されたり、場合によってはアプリのエラー画面の対応なども迫られる可能性が出てきます。
後者はアプリ自体の問題であってサークル側の責任ではない場合が多いでしょうが、状況的に対応せざるを得ないでしょう。コンビニのレジ打ちや、家電量販店の店員のようなイメージですね。

勿論、サークル側の準備段階で何らかのミスをしていてそのことに会場入りまで気づいていなければ、会場においてその対応に追われることにもなります。

また、滅多にないとは思いますが、利用したサービスがサーバエラーを吐いたりサーバダウンしたりなどしてデータのダウンロードが上手くいかず、手動で配布し直さなければならないといった状況になる可能性も十分あります。

 

「予め購入方法は示しますが、問い合わせへのサポートは一切行いません」「会場でもやり方は説明しますが、操作のサポートは一切行いません」と強気の姿勢を示すことは可能でしょうが、サークルへの心証はあまりよくないと思われます。

お互いに、高い理解力と高いコミュニケーション能力を求めることになりますので、各記述内容についてよく注意しながら採用するようにしてください。私は発生したトラブルに対する責任は負うことができません。

もっとこうしたほうがいいんじゃない?と思ったら

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