わたしがわたしでいれるように

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バンナムは自社のアイドル音楽コンテンツをダンスミュージックやクラブミュージックの文脈に載せようとしているのか〈前編〉:ミリオンライブを中心に

なんだかここ数年間で、バンナムのアイドル音楽コンテンツにおいてEDMやクラブミュージックとカテゴライズされるような楽曲が強化されているように感じています。

筆者は主にアイマス (殆どミリオンライブ) を追っている人間です。ミリオンライブだけで見てもそう感じていたのですが、アイマスの他ブランドやバンナム内の他コンテンツを見てもその傾向があるように感じられました。

それってもしかしてバンナムが単に世間のトレンドに乗っているだけではないか?とも考えたのですが、折角なので簡単に纏めてみることにしました。

 

ミリオンライブの話がメインになってしまう点はご了承ください。
また、筆者は音楽の知識に関してはBEMANIを入口にして薄く知っている程度で音楽の素養はないので、専門的な記述が薄く稚拙です。記述に誤りやご意見ございましたら是非ご指摘ください。

音楽めちゃ詳しい方~~~詳しい目線でバンナムについてこの手の記事書いておくれ~~~

marshmallow-qa.com

まずは結論

まずは結論から。

アイナナでは2018年から、あんスタでは2019年から、ニジガクでは2020年から、アイマス (ミリ/エム/シャニ) では2021年からそれぞれ、ダンスミュージックやクラブミュージックの強化がなされているように感じられるというのが現時点でのまとめです。

また、2020年には電音部、2021年にはラブライブ! スーパースター!! がそれぞれスタートしており、これらの音楽性も同時期の動向として関係していると思います。

 

ただし勿論これらはあくまで私の個人の感覚にすぎません。

アイドルマスター ミリオンライブ!

ミリオンライブには、SUPA LOVE所属のKOHさんというEDMの名手による土壌が元からありました。

2014年の『dear...』『smiley days』のような王道に始まり、いわゆる "治安の悪い" 音のする楽曲で言えば2015年の『addicted』、そして極めつきには2019年の『ミラージュ・ミラー』があります。『ミラージュ・ミラー』はドロップの部分にテーマ性の高い台詞が重ねられており、CharlotteCharlotteの物語を盛り上げる役目の一端を負わせているように感じられます。

youtu.be 【『dear...』 作詞・作曲・編曲:KOH】

youtu.be (『smiley days』 作詞・作曲・編曲:KOH】

youtu.be 【『addicted』 作詞・作曲・編曲:KOH】

youtu.be 【『ミラージュ・ミラー』 作詞:月丘りあ子, KOH、作曲・編曲:KOH】

 

KOHさんは2020年に『Do the IDOL!! ~断崖絶壁チュパカブラ~』を発表されます。これは「ミリシタ感謝祭」というイベントにおいて、楽曲制作発注テーマを決めようということでユーザ参加型でテーマを決められた楽曲でした。

テーマは「新しい時代への挑戦」「断崖絶壁を登るような」「ハードコアテクノ」「チュパカブラ」という4点に決まり、ミリオンライブとしては初めて公式にハードコアをジャンルとして冠された楽曲が制作されたことになります (サビはユーロビートですが)。

youtu.be 【『Do the IDOL!! ~断崖絶壁チュパカブラ~』 作詞:藤本記子、作曲:佐藤貴文、編曲:KOH】

 

そしてKOHさんは2021年にミリシタ4周年楽曲『Harmony 4 You』を担当されました。現在のアイマスにおいて周年楽曲は大きな存在感を持つ節目の楽曲であり、そこにEDMが起用された形です。

youtu.be 【『Harmony 4 You』 作詞:宮崎まゆ、作曲・編曲:KOH】

 

…KOHさんの話ばかりになってしまいました。

さて、個人的に大きな意味を持ったと考えているのが2020年に発表されたJus-2-Mintの『Hang In There!』です。試聴動画には含まれていない部分なのが残念ですが、ドロップの前に「いくぞ!」という台詞が入ります。そしてドロップでは台詞はありません。

youtu.be 【『Hang In There!』 作詞:MEG.ME、作曲・編曲:塚田耕平】

ドロップの前に「いくぞ!」という台詞があるのは、「アイドルの歌唱だけでなく、楽曲のドロップ部分で・音楽そのもの自体で魅せてやる」という意思の表れではないかと私は感じました。

普通、ボーカル曲のドロップは間奏の部分であることが多いためか、サビが終わった後にはそのまま間奏やドロップに入ることが多いと思います。ですから間奏の後に、その後のラスサビに向けて間奏や落ちサビの最後に「いくぞ!」と言うのならよく分かります。
しかし『Hang In There!』では、間奏の後ではなく間奏に入るところで「いくぞ!」と言っているのです。そうするからには、間奏で披露されるドロップ自体に意識を運ばせようと意図されているような気がします。

ドロップの存在をアピールするのは、アイドルのキャラクターが歌う楽曲として画期的ではないでしょうか。

 

ミリオンライブにおけるクラブミュージックについては、重大な展開としてRemixシリーズがありました。2013年~2014年の楽曲群LIVE THE@TER PERFORMANCE (LTP) のRemixシリーズが2021年、2014年~2015年の楽曲群LIVE THE@TER HARMONY (LTH) のRemixシリーズが2022年に発売されています。

アイマス楽曲のRemixは主にシンデレラガールズで行われており、ミリオンライブにおいてはこれまでラジオ曲のRemixなどごく少ない数の展開にとどまっていました。そんな中で60曲以上のLTP楽曲がRemixされることが2020年末に一挙に発表された訳です。

LTP Remixは、Snail's Houseさん、sky_deltaさん、KO3さん、DJ WILDPARTYさん、チバニャンさん (レペゼン地球)、☆Taku Takahashiさん (m-flo, block.fm)、ケンモチヒデフミさん (水曜日のカンパネラ) などシンデレラとは色の違うトラックメーカーによるRemixがなされとても面白い企画になったと感じます。

第2弾となったLTH Remixでは、これまで虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会でのみ名前が観測されていた覆面作家 (恐らく) のBEATNINEさんとDummy Dogさんが参加されていることにバンナムの水平展開の面白みがありますね。

nznb.hatenablog.jp youtu.be

 

ミリオンライブではもう一つ無視できない動向があります。2021年から展開中のM@STER SPARKLE 2 (MS2) シリーズにおいて各CDにHifumiの作家による楽曲が必ず1曲ずつ入っていることです。

MS2ではミリオンでは初めてHifumi, inc.のマネージャー桟敷宗太さんがディレクターに就任しました。Hifumiはy0c1eこと佐高陵平さんが目立って注目されていますが、佐高さんに限らず高パフォーマンスのクリエイター集団というイメージがあります。
Hifumiのディレクションによる傾向が今後も続くのか気になっています。

youtu.be

 

ミリオンのお洒落な楽曲といえばKOHさん…というのは一見分かりやすい見方ですが、しかしKOHさん以外の楽曲が総じていわゆる王道のアイドルソングやアニソンロックばかりだったかといえば実際にはそうでもありません。お洒落路線な楽曲は勿論ほかにも2015年の『piece of cake』、2017年の『永遠の花』、2018年の『教えてlast note...』など複数あって、そんな中での2021年のHifumi佐高さんの参加は象徴的でした。

(↓他動画より音量が大きいのでご注意ください) youtu.be 【『piece of cake』 作詞:松井洋平、作曲・編曲:AstroNoteS】

youtu.be 【『永遠の花』 作詞:森由里子、作曲・編曲:三好啓太】

youtu.be 【『教えてlast note...』 作詞:安藤紗々、作曲・編曲:奈須野新平】

そこで私が立ててみたのは「お洒落な楽曲の供給数自体は保ちつつも、お洒落な楽曲におけるKOHさん依存率を下げようとしている」可能性と、更には「KOHさん以外のクリエイターが手掛けるEDMを増やそうとしている」可能性という2点の仮説になります。

 

上段で述べたことは感覚的な話です。もしかしたら色々なクリエイターを探したら単にEDMが得意な人が多かっただけなのかもしれないとも考えられます。

ところが、それよりはやはり意識的にEDMを頑張ろうとしている可能性が高いのではないかと感じさせた出来事が。それが2023年放送予定のアニメ版ミリオンライブのMVでした。

アイドルものの作品のテレビアニメシリーズ化に関して、そのPRのためのMVで流す全体曲にEDMの新曲を起用したという事実。これは今後のミリオンの方向性を意識させる理由として十分すぎるでしょう。

youtu.be 【『セブンカウント』 作詞:松井洋平、作曲・編曲:佐高陵平】

アイドルマスター シャイニーカラーズ

シャイニーカラーズでは2021年に7番目のユニットであるSHHisを発表します。SHHisは現時点でシャイニーカラーズ最後のユニットであり、今後の追加はもう来ないとする説も囁かれています。

『OH MY GOD』を手掛けたEunsol (1008) さんはシャイニーカラーズへの提供歴の非常に多い会社であるオベリスク所属の作家で、韓国出身の方です。これまでのアイマス楽曲とは一線を画した本格的なヒップホップとなっています。

youtu.be 【『OH MY GOD』 作詞:Co-sho、作曲:小久保祐希, Eunsol (1008)、編曲:Eunsol (1008)】
【『Fly and Fly』 作詞:Co-sho、作曲:Kohei Yokono, 小久保祐希, JUNE、編曲:Kohei Yokono】

 

私には、SHHisは従来のアイドルマスターの枠を破壊して第一線の音楽コンテンツとしての役目をアイマスにもたらす役割を担っている存在なのではないかと感じられました。端的に言うと「旧来的ないわゆる "アイドル" のキャラクターが歌うような歌ではない」訳です。今時のアイドルの文脈に載せている。

七草にちかという存在がアイドルマスターというコンテンツ自体への否定と再構築を担っている旨の考察は世にごまんとあるかと思いますのでここでは述べませんが、SHHisは音楽においても前例のレールに乗らないこと自体にそうした意味を纏わせている側面があるのかもしれません。

2022年になりSHHisの参加した合同曲『Secret utopIA』においてもこの雰囲気が失われていないのが面白いです。
※試聴動画なし

 

SHHisの音楽性は明らかにK-POPの文脈を汲んでいますので、SHHisへの直接的な言及ではありませんが分かりやすい記事を一つ貼っておきます。

che2rybomb.hatenablog.com

 

SHHis以外にも目を向けましょう。

3周年楽曲『Resonance⁺』のC/W曲『Color Days』がR&B風のダンスナンバーになっています。SHHis参加後の楽曲であることも関係しているのかもしれません。
ミリオンライブの項でも述べましたが、アイマスにおける周年楽曲は意味の大きな存在です。2021年はミリオンライブは表題曲、シャイニーカラーズではC/W曲にEDMを起用したことになりました。

youtu.be 【『Color Days』 作詞:Co-sho、作曲:家原正樹, 小久保祐希, YHANAEL、編曲:YUU for YOU】

 

シャイニーカラーズにおいてArte Refactの作家は主にアンティーカの独自の世界観を作り出してきました。一方、後述するSideMのC.FIRST楽曲を担当したArteの河合泰志さんはシャイニーカラーズにおいてストレイライトの『Hide & Attack』を手掛けています。これ自体はストレイライトのテーマ性を歌詞にも色濃く反映したカッコいいロックナンバーでした。

2022年にはアンティーカとストレイライトの合同曲『Killer×Mission』が発表されます。アンティーカとストレイライトの音楽を見事に組み合わせたゴシックテイストのロックで、河合さんの本領発揮とも言える重く響くキックが感じられる楽曲になっています。
※試聴動画なし

 

ソロ楽曲では2021年の『わたしの主人公はわたしだから!』が楽しいです。Arte Refactの作家でハッピーハードコアを作る方といえば本多友紀さんというイメージがありますが、この楽曲では本多さんの作曲の下、矢鴇つかささんが編曲を務められています。ハッピーハードコアでありながら矢鴇さんならではの透明感のあるシンセが鳴っており、とても面白い仕上がりになっています。

同じCOLORFUL FE@THERSシリーズから、『また明日』も外せません。JUVENILEさんはアイナナへの提供で知られているホリプロインターナショナル所属の作家です。

youtu.be 【『わたしの主人公はわたしだから!』 作詞:秋浦智裕、作曲:本多友紀、編曲:矢鴇つかさ
【『また明日』 作詞:鈴木静那、作曲・編曲:JUVENILE

アイドルマスター SideM

SideMでは2021年のC.FIRSTの発表が大きな話題を呼びました。

C.FIRSTはサイスタの発表と同時にお披露目となったユニットであり、キャラクターデザインの傾向や瞳の彩色の特徴など、SideMの新しい展開を象徴しているように感じられます。まだ2曲だけなので今後の楽曲がどうなるかは分かりませんが、現在のアイドルマスターを象徴する面白い始まり方をしたユニットではないでしょうか。

youtu.be 【『We're the one』 作詞:Kanata Okajima、作曲:本多友紀、編曲:河合泰志】
【『Not Alone』 作詞:Kanata Okajima、作曲:本多友紀、編曲:河合泰志】

 

C.FIRSTだけでなく、Legendersにも2021年末に『Time Before Time』が発表されます。玉木千尋さんといえば同じTime Files所属の小野貴光さんの楽曲の編曲を一貫して担当されていることで知られていますが、これは玉木さんが作編曲をどちらも担当された数少ない楽曲です。

youtu.be 【『Time Before Time』 作詞:松井洋平、作曲・編曲:玉木千尋

 

また、ダンスミュージック/クラブミュージックに直接関係してはいないのですが今後関係するかもしれない事項として、2021年にはSideMにもう一つ興味深い動きがありました。MONACA所属の井上馨太さんがSideMに参加されたことです。

youtu.be 【『Stories』 作詞:Kanata Okajima、作曲:鈴木航海、編曲:井上馨太】

これまでMONACAの作家はアイマスでは日本コロムビアシンデレラガールズなどへの参加のみであり、ランティスが管轄するアイマスブランドへの直接的な参加歴はありませんでした。MONACA×ランティスといえばアイカツという大きな例があるため、実は特段珍しいことではないはずではあります。しかし、ことアイマスにおいては2021年のSideMへの参加がランティス側では初めての例であり、かなり驚きを伴って受け止められていた印象がありました。

井上さんは『Stories』に先行して『VOY@GER』 (後述) の作編曲を担当されていたので、もしかしたらそれが関係しているのかもしれません。

2021年はランティスアイマスの "シンギュラリティ"?

シンギュラリティって言いたかっただけです🙃

SHHis、C.FIRST、『VOY@GER』の発表がいずれも2021年でした。2020年以前も少しずつ種は蒔かれてきましたが、2021年は本格的にダンスミュージック、クラブミュージック推しをはっきりと表に出してきた年だったのではないでしょうか。

 

ミリオンライブでは、2020年時点でのJus-2-Mint『Super Duper』では "女性へ向けた応援歌" の軸を守っていました。言い換えれば、その点においてミリオンはまだ音楽性に対していわゆる保守的な "アイマスらしさ" の部分を残していたという見方もできるでしょう。 (勿論、応援歌の軸自体はとっても素敵なことですしなくなってほしいなんて思ってませんが…!)

ところが、2021年には満を持してコンテンポラリーダンスをテーマにした『産声とクラブ』を発表しています。アーティスティックな音楽性もさることながら、生命の誕生を綴った歌詞も併せて強い印象を残しています。

youtu.be 【『産声とクラブ』 作詞・作曲・編曲:佐高陵平】

 

そして、2021年のアイドルマスターの展開で無視できないのはなんといっても5ブランド全体のイメージソング『VOY@GER』の発表です。

youtu.be 【『VOY@GER』 作詞:烏屋茶房、作曲・編曲:井上馨太】

MVを見るとはっきりとドロップをダンスで魅せています。ドロップの後、ラップパートを入れて盛り上げたまま本編へ戻る流れがとても美しいです。

 

こうして見てみると、2021年のアイマスは重要な局面で露骨なほどにダンスミュージック、クラブミュージックを推していることが分かります。

LTP Remixの発表こそ2020年末でしたが、それへの反応はハードコア好きなど一部の狭いファンの間での小さなムーブメントだったと感じます。ミリオンライブファンの間で一気にその存在を知らしめたと言えるのは、2021年を挟んで2022年開催になったミリオン8thライブ「Twelw@ve」での『追憶のサンドグラス (sky_delta Remix)』の披露だったと言えるでしょう。

SHHis、C.FIRST、ミリオンライブではHifumi, inc.の動向など。2022年の展開が気になるばかりです。

 

記事が長くなりすぎるので記事を分けました。後編では電音部、アイナナ、ラブライブの2作品などについて書いています。

nznb.hatenablog.jp